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ATMを12ftコンテナで長距離輸送

日立チャネルソリューションズ株式会社

 日立チャネルソリューションズ㈱は、愛知県尾張旭市に生産拠点があり、2004年、㈱日立製作所情報機器事業部とオムロン㈱ファイナンシャル・システムズ・ビジネスカンパニーを統合し設立された会社。ATM(現金自動預払機)を中心に金融ソリューション、流通(売上金入金機)や交通(駅窓口の座席予約端末装置)・公共(宝くじ端末)等、幅広い分野に製品提供し、社会インフラの一部として機能しています。海外でもATMを販売しており、国内との比率は半々となっています。

2016年9月、同社はATMを中心に、売上金入金機や宝くじ端末などの輸送に、名古屋ターミナル駅発で鉄道コンテナの利用を始めました。

 同社グローバルSCM改革統括プロジェクトの担当者は「顧客ごとの細かい要求に沿った製品を提供するため、生産は多品種小ロットになっています。これまで、製品輸送は100%トラックに頼っていました。また大口の契約が成立しており、2018年度には輸送量が1.5倍に増える見込みです。このような中、ドライバー不足により、トラック数の不足や輸送費の値上げが懸念され、輸送力の確保と輸送費改善が課題でした」と背景を話しました。

 物流を担う(株)日立物流に相談したところ、トラック輸送だけで今後輸送を完遂するのは難しいと意見が一致。そこでJR貨物東海支社から見積もりを取り、おおよそ500km以上であればメリットがあると判断、本格的に鉄道利用の検討を始めました。また、日立グループではCO₂排出量削減を推進しており、モーダルシフトでさらなる環境負荷低減を図る狙いもありました。

 トラックから鉄道へモーダルシフトするにあたり、ポイントとなったのはリードタイムとATMの製造が小ロットであること。

生産に当たる日立ターミナルメカトロニクス(株)生産センタ生産計画部棚残統制課の担当者は「従来は完成品を日立物流に渡して配車計画を立ててもらいましたが、ある程度ロットをまとめて出荷するために生産予定をこちらでとりまとめ、1週間から1ヵ月分の見通しを立てて、日立物流と一緒に出荷計画を立てています。鉄道輸送用は前倒しで完成するように生産調整しています。仕様の違う複数金融機関のATMを、可能な限り、到着地別・6台単位にまとめて出荷します」と変更点を述べました。積載率が上がるほどコストメリットがあるため、生産と物流の調整スキームを作成したそうです。

 また「集荷時間に合わせて生産して発送すると、到着時間が読めるのはメリット。利用運送事業者である日本通運(株)の『鉄道コンテNAVI』を利用して、輸送状況の確認も行えます」と話しました。

近年は“車輛手配”で苦労していたという日立物流も鉄道シフトを歓迎しています。

日立チャネルソリューションズで生産するATMの重量は1台約500kg、2万点近い部品から成る精密機械です。鉄道シフトに際しては開発部門と品質保証部門に相談し、様々な輸送試験を行って安全性を確認しました。

海外で鉄道輸送する際に使う木枠は全面を覆うタイプで、JIS規格のダメージ試験には通りましたが、国内トラック輸送に使われている緩衝材と木枠のキャップだけではダメージを避けられないことが判明。「せっかく作るのだから、エコなパレットを」と、日立物流と日本ラミー(株)に声を掛け、パレット開発に乗り出しました。

 日立物流中部営業本部グローバル営業開発Gの担当者は、「竹と間伐材を原料とする『タケパレ』は、金属を使わなくても強度が保てるよう設計し、リユースできて、廃棄もしやすい。ATM輸送は取り扱いが非常に繊細で、高額な重量物を毎日運ぶことになるため、出荷側と到着側両方で扱いやすいよう、現場の声を集めて改良を重ねました」と試行錯誤の過程を振り返ります。

 ATM出荷の繁忙期は5~11月。鉄道利用をはじめた9月以降、生産と物流の連携やパレットの使い勝手を確認しながら進めてきました。繁忙期を前にノウハウを確立し、全機種の8~9割を鉄道で輸送する見込みだそうです。

今後について日立チャネルソリューションズのグローバルSCM改革統括プロジェクトの担当者は、「今までは納期順に生産していましたが、地域別生産を意識した生産体制にシフトしようとしています。大まかな納品リストがありますので、納期順ではありますが、地域ごとにまとまるように調整し、物流に反映して鉄道利用率・積載効率の両方を上げていく考えです」と述べ、さらに生産と物流がリンクしていく方向を示しました。

 また同社は、2017年3月、エコレールマーク取組企業認定を取得しました。